第1回 東京で住み継ぐ家をつくり継ぐ
 
株式会社田中工務店 田中健司(東京都江戸川区)

No.「らしさ」を魅力的に表現する
 
ここに一冊の本があります。
 タイトルは、優秀工務店・田中工務店の標準仕様書「木造住宅の実用納まり図鑑」。
 意匠を重視しながらも、メンテナンス性などの使い勝手に配慮された自社開発のディティールが、わかり易くまとめられています。
田中工務店は、意匠と性能を高いレベルで両立させている稀有な工務店です。社会からの要望に正面から向き合い真摯に家づくりに取り組む田中社長から、性能ガイドブックの改訂の依頼があり、打ち合わせの後インタビューに応じていただきました。
 
藤田 「田中さんとの出会いはもう15年くらい前になるでしょうか?」
 
田中 「そうですね。OMソーラー協会(※1)に加盟したのが2002年。OMソーラーのシステムはもちろん、それ以上にOMソーラーのプロモーションにすごく興味があったんですよ。そのビジュアルの制作をしていたのが藤田さんだったんですよね。」
 
藤田 「そうでしたね。OMソーラーの仕事は、全国発信で自然と共生する建築運動でもあったから、あの頃夢中になって取り組んだことを思い出します。」
 
田中 「ちょうど同じ頃、東京の工務店3社が集まって互いのプロモーションのために、家づくりの勉強会をしようということになったんですよ」
 
藤田 「それが東京町家(※2)ですね。」
 
田中 「そうです。その東京町家の情報発信をしようと思った時に、じゃあ、ロゴやパンフレットなどの販促物はどうしようか…という話になって。そこで、3社の共通点であるOMソーラーのプロモーションに携わっていた藤田さんにお願いするのが一番良いんじゃないかと各社の考えが揃ったんです。」
 
藤田 「東京町家のご相談をいただいてから、どの方向に向かえば良いか?何から手をつけてゆけばよいか?随分打ち合わせを重ねましたよね。あの頃、田中さんからすごくエネルギーを感じたことを覚えています。」
 
田中 「えーっ!エネルギーですか?もしかしたら藤田さんをはじめ、日本中ですごくいい仕事をされている工務店さんたちとの出会いがそうさせていたのかもしれませんね(笑)」
 
藤田 「OMソーラーには前向きな工務店が集まっていますからね。実はね、東京町家で“てぬぐい”をデザインしたのがきっかけで、他の工務店さんからも手ぬぐいのデザインの依頼が増えたんですよ。」
 
田中 「へぇ!それは初めて知りました。何だか嬉しいですね。あのてぬぐいから色々と発展しましたよね。振り返ってみると、東京町家のプロモーションに取り組んだことで、田中工務店としても方向性が見えてきて、自社のプロモーションを強く意識するようになったと思います。」
 
藤田 「そうでしたか。東京町家が今の田中工務店の家づくりの方向性をつくるきっかけになったんですね。」
 
田中 「そうですね。それから少しずつ自社の施工例も増えてきたので、施工例をまとめるカバーをお願いしたんですよね。」
 
藤田 「はい、カバーひとつですけど、田中工務店の印象を左右するものなので形態や紙、印刷方法を試行錯誤しましたね。」
 
田中 「とても気に入っていますよ。今でも変らず使ってます。施行例カバーをつくった頃から、周りに少しずつ認めて貰えるようになってきたわけですが…、でもねー、この先も選ばれ続けるためには、うちのアイデンティティを明確にしたプロモーションをしていかなければと感じはじめていたんです。そこで、シンボルマークをつくろうと思い立ち、田中工務店らしさを客観的に理解してくれている藤田さんにお願いしようと。」
 
藤田 「ありがとうございます。田中さんのシンボルマークは一年以上かかりましたよね。田中工務店らしさを表現するのにとても苦労しました。当たり前ですが田中さんは納得しないと首を縦に振らない方だし、こだわりも強い。田中さんが納得できなければ、つくり手として僕も納得できない。」
 
田中 「うん、うん、本当に長かったですねー(笑)」
 
藤田 「シンボルマークやロゴタイプは、多くの人に明快にイメージを与えて、永く愛される役割を果たさなければならないんです。だから田中工務店の志や想い、哲学、これまでの時間の流れを充分に理解しなくてははじまらない。時間はかかりましたが、本質を探り出すことで、ふさわしい印象を魅力的に可視化できたんだと思っています。」
 
田中 「なるほどね。時間をかけて検討した結果、最終的にコンセプトも固まって、藤田さんが『田中の木組みが町並みをつくる』という案を出してくれた時には『コレだ!』と直感でわかったんです。シンプルながらも、コンセプトや込められた意味が感じられるものだったから。」
 
藤田 「シンボルマークは、理屈だけでもないんですよね。『あぁ、これだ』と納得してもらえたことで田中工務店の本質にたどり着いたと思います。」
 
田中 「シンボルマークの制作では藤田さんの熱意がものすごく伝わってきたというか…。」
 
藤田 「あははは(笑)田中さんのこだわりに応えるために真剣でした。シンボルマークやロゴタイプは、会社と様々なステークホルダーとの関係性をひとくくりにする目印なんですよ。マークが完成してから、時間をかけて顧客や生活者との関係性とイメージをマークという容器に貯めていくことで、ますます力を持って働くようになると思います。」
 
No.2へつづく ▲ Interview No.2へ
 
 
 
 

No.2 ブランディングにつながるプロモーション
 
田中 「実は施工例カバーやシンボルマークをつくる時に、自社の正しい伝え方をもう一度考えようと思ったんです。」
 
藤田 「伝えたいことは伝わっているのか?田中工務店らしさが伝わっているのか?ということを考えられたわけですね」
 
田中 「はい。実はお客様は工務店が何をしているのか良くかわからないんじゃないかと感じたんですよね。家をつくっていることは知っているけど、設計や性能にまで拘っていることは知らないんじゃないかと。それまで僕たちが掲げていたスローガンなんかも、お客様にはちゃんと伝わっていなかったのかもしれませんしね。」
 
藤田 「確かに、自社のことをどうやって伝えたらいいのかは、工務店自身には分かりにくいと思います。情報を整理し、ストーリーを考えて効果的に伝えるのがデザイナーの仕事なんですよね。シンボルマークの制作は、もう一度自社のことを見返す良い機会になりましたね。」
 
田中 「はい。あの時に、しっかりと整理できたと思います。」
 
藤田 「よかったです。伝えたいメッセージが整理されたことで、田中工務店のスローガンである『住み継ぐ家をつくり継ぐ』と、“田中の木組みが街並をつくる”という意味が込められたシンボルマーク、そしてロゴタイプがひとつになって、強いメッセージを発信できているんだと思います。田中工務店がどんな工務店なのか、良さ、らしさが伝わる最適なツールをつくって活用していくことが大切ですね。」
 
田中 「シンボルマークやスローガンが出来たことで、見学会のポスターや展示会用パネルや名刺・封筒等のアプリケーション・デザインもお願いしましたよね。建物のイメージとキャッチコピーだけで表現しているパネルは、家のつくり手を集めた展示会の中でも凄く目立ちました。一瞬でどんな家をつくっているかが伝わるパネルでしたからね。」
 
藤田 「そうですねー。田中さんは名刺の裏面にも内観の写真とスローガンを入れてつくりましたが、これも受け取ったお客様が、どんな家をつくっている工務店なのか一目でわかる様になっていますよね。ある工務店さんから聞いた話ですが、名刺を受け取ったお客様が『こういう名刺の工務店なら施工をお願いしたい』と言ってくださったそうなんです。やはり名刺ひとつでも、お客様には工務店が発しているメッセージや印象が伝わるということですね。」
 
田中 「確かに、それはあると思いますね。」
 
藤田 「その声を聞いて、制作者として嬉しくもありましたが、アプリケーション全てにおいてメッセージの伝わり方を丁寧に考えなければ、と改めて感じましたね。」
 
田中 「なるほど。同じメッセージを伝えるのに、ツールによって伝え方が変わるんですか?」
 
藤田 「そうなんです。お客様の理解にも段階がありますし、デザインには必ず目的やメッセージがあるんです。そこを考えずに表面的にツールをつくるだけでは、意味が伝わりませんよ。それではプロモーションとしての効果もありませんから。」
 
田中 「なるほど。」
 
藤田 「『美しい意匠と確かな性能を両立する』というメッセージが、お客様との接点で上手く積み重なって、『東京で住み続けられる木の家をつくるなら田中工務店』というイメージがお客様の心の中に構築できたんじゃないでしょうか?」
 
No.3へつづく  ▲ Interview No.3へ
 
 
 

No.3 どう伝えたら、どう思ってもらえるのか
 
田中 「やはり藤田さんと仕事をした中で、シンボルマークと性能ガイドブックをつくったことが一番大きかったと思います。
名古屋と埼玉の工務店と田中工務店の3社が持ち回りでプロモーション勉強会をやる機会があって、今のように国が定めた長期優良住宅という認定基準がまだ無い中でも家の“性能”が大切だということを僕たちは考えていたんです。各社独自性はあるものの、共通項があったので、それを藤田さんと野池政宏(※3)さんがまとめたものが性能ガイドブックでしたよね。」
 
藤田 「そうでしたね。実は性能ガイドブックの内容って、関心がある工務店はみんな取り組んでいたことなんですよね。それを目に見えるカタチにしていないからお客様へ伝わっていないだけで。そういう見えない“性能”をカタチにして伝えることはできないだろうかと、それがお客様から見た他の工務店との差異化になるんじゃないかと考えて、野池さんへ相談したのが性能ガイドブックの始まりなんです。」
 
田中 「性能を項目ごとにひも解いてまとめたのは画期的でしたね〜。」
 
藤田 「新しいプロモーションツールを開発できたということになるんですかね。」
 
田中 「そうだと思いますよ。その後につくったのが設計ルールブック。通常ならまず設計のことをはじめに冊子にまとめようするんですが、田中工務店の場合は、“性能”が先。そして “設計”。それが対になっているのが、ポイント!なんですよね。」
 
藤田 「以前は田中工務店ならではの設計力も、しっかりと伝わっていなかったと思うんですよね。プロモーションツール(パンフレット)で性能も設計もしっかりとやってくれる工務店だ!と家づくりの価値を明確に表現できたことで、お客様に共感していただき信頼に繋げることが出来たと思いますね。こうして強みを持てたのは、何よりもつくったツールを田中さんがしっかりと活用しているということが大きいと思います。」
 
田中 「ありがとうございます。」
 
藤田 「田中さんは、性能ガイドブックと設計ルールブックをお客様との接点のかなり早い段階で渡していますよね。それは、その2冊が田中工務店にとってのコンセプトブックになっているんじゃないかと思うんです。“意匠”と“性能”を両立させること、それが田中工務店のアイデンティティではないでしょうか。」
 
田中 「なるほど。確かに、つくったツールをどう活用していこうか、というのは常に考えてきたと思います。つい最近も、性能ガイドブックの内容について見直したいなと考えて藤田さんに依頼をしたところですよね。今までの性能ガイドブックは製本をしていなかったんですが、今度は冊子にまとめようと…。」
 
藤田 「最初に性能ガイドブックをつくってから何年も経っていますからね。もう一度見返して、次の段階へということですね。」
 
田中 「前へ進まなければいけませんからね。」
 
藤田 「今回振り返ってみて、田中さんとは沢山の仕事をさせていただきましたけど、その時その時の課題をしっかりと整理して解決に向かって“田中工務店らしさ”を表現してきたんだと感じました。」
 
田中 「こうやって振り返ると、プロモーションがスムーズにいったのは、藤田さんとの段階を重ねた信頼関係があったからこそですよね。」
 
藤田 「ありがとうございます。長い間一緒にお仕事させていただくということは本当に有り難いことだと思います。やはり、東京町家などの田中工務店以外の仕事にも関わることができて、常に田中さんと同じ方向を見て仕事に取り組んで来られたんじゃないかと思います。これからも同じ視点で歩みながらお手伝いができたらと思います。」
 
2017年8月28日 田中工務店にて
 
 
 

No.「らしさ」を魅力的に表現する
 
ここに一冊の本があります。
 タイトルは、優秀工務店・田中工務店の標準仕様書「木造住宅の実用納まり図鑑」。
 意匠を重視しながらも、メンテナンス性などの使い勝手に配慮された自社開発のディティールが、わかり易くまとめられています。
田中工務店は、意匠と性能を高いレベルで両立させている稀有な工務店です。社会からの要望に正面から向き合い真摯に家づくりに取り組む田中社長から、性能ガイドブックの改訂の依頼があり、打ち合わせの後インタビューに応じていただきました。
 
藤田 「田中さんとの出会いはもう15年くらい前になるでしょうか?」
 
田中 「そうですね。OMソーラー協会(※1)に加盟したのが2002年。OMソーラーのシステムはもちろん、それ以上にOMソーラーのプロモーションにすごく興味があったんですよ。そのビジュアルの制作をしていたのが藤田さんだったんですよね。」
 
藤田 「そうでしたね。OMソーラーの仕事は、全国発信で自然と共生する建築運動でもあったから、あの頃夢中になって取り組んだことを思い出します。」
 
田中 「ちょうど同じ頃、東京の工務店3社が集まって互いのプロモーションのために、家づくりの勉強会をしようということになったんですよ」
 
藤田 「それが東京町家(※2)ですね。」
 
田中 「そうです。その東京町家の情報発信をしようと思った時に、じゃあ、ロゴやパンフレットなどの販促物はどうしようか…という話になって。そこで、3社の共通点であるOMソーラーのプロモーションに携わっていた藤田さんにお願いするのが一番良いんじゃないかと各社の考えが揃ったんです。」
 
藤田 「東京町家のご相談をいただいてから、どの方向に向かえば良いか?何から手をつけてゆけばよいか?随分打ち合わせを重ねましたよね。あの頃、田中さんからすごくエネルギーを感じたことを覚えています。」
 
田中 「えーっ!エネルギーですか?もしかしたら藤田さんをはじめ、日本中ですごくいい仕事をされている工務店さんたちとの出会いがそうさせていたのかもしれませんね(笑)」
 
藤田 「OMソーラーには前向きな工務店が集まっていますからね。実はね、東京町家で“てぬぐい”をデザインしたのがきっかけで、他の工務店さんからも手ぬぐいのデザインの依頼が増えたんですよ。」
 
田中 「へぇ!それは初めて知りました。何だか嬉しいですね。あのてぬぐいから色々と発展しましたよね。振り返ってみると、東京町家のプロモーションに取り組んだことで、田中工務店としても方向性が見えてきて、自社のプロモーションを強く意識するようになったと思います。」
 
藤田 「そうでしたか。東京町家が今の田中工務店の家づくりの方向性をつくるきっかけになったんですね。」
 
田中 「そうですね。それから少しずつ自社の施工例も増えてきたので、施工例をまとめるカバーをお願いしたんですよね。」
 
藤田 「はい、カバーひとつですけど、田中工務店の印象を左右するものなので形態や紙、印刷方法を試行錯誤しましたね。」
 
田中 「とても気に入っていますよ。今でも変らず使ってます。施行例カバーをつくった頃から、周りに少しずつ認めて貰えるようになってきたわけですが…、でもねー、この先も選ばれ続けるためには、うちのアイデンティティを明確にしたプロモーションをしていかなければと感じはじめていたんです。そこで、シンボルマークをつくろうと思い立ち、田中工務店らしさを客観的に理解してくれている藤田さんにお願いしようと。」
 
藤田 「ありがとうございます。田中さんのシンボルマークは一年以上かかりましたよね。田中工務店らしさを表現するのにとても苦労しました。当たり前ですが田中さんは納得しないと首を縦に振らない方だし、こだわりも強い。田中さんが納得できなければ、つくり手として僕も納得できない。」
 
田中 「うん、うん、本当に長かったですねー(笑)」
 
藤田 「シンボルマークやロゴタイプは、多くの人に明快にイメージを与えて、永く愛される役割を果たさなければならないんです。だから田中工務店の志や想い、哲学、これまでの時間の流れを充分に理解しなくてははじまらない。時間はかかりましたが、本質を探り出すことで、ふさわしい印象を魅力的に可視化できたんだと思っています。」
 
田中 「なるほどね。時間をかけて検討した結果、最終的にコンセプトも固まって、藤田さんが『田中の木組みが町並みをつくる』という案を出してくれた時には『コレだ!』と直感でわかったんです。シンプルながらも、コンセプトや込められた意味が感じられるものだったから。」
 
藤田 「シンボルマークは、理屈だけでもないんですよね。『あぁ、これだ』と納得してもらえたことで田中工務店の本質にたどり着いたと思います。」
 
田中 「シンボルマークの制作では藤田さんの熱意がものすごく伝わってきたというか…。」
 
藤田 「あははは(笑)田中さんのこだわりに応えるために真剣でした。シンボルマークやロゴタイプは、会社と様々なステークホルダーとの関係性をひとくくりにする目印なんですよ。マークが完成してから、時間をかけて顧客や生活者との関係性とイメージをマークという容器に貯めていくことで、ますます力を持って働くようになると思います。」
 
No.2へつづく ▲ Interview No.2へ
 
 
 
 
 
 
 
 

No.2 ブランディングにつながるプロモーション
 
田中 「実は施工例カバーやシンボルマークをつくる時に、自社の正しい伝え方をもう一度考えようと思ったんです。」
 
藤田 「伝えたいことは伝わっているのか?田中工務店らしさが伝わっているのか?ということを考えられたわけですね」
 
田中 「はい。実はお客様は工務店が何をしているのか良くかわからないんじゃないかと感じたんですよね。家をつくっていることは知っているけど、設計や性能にまで拘っていることは知らないんじゃないかと。それまで僕たちが掲げていたスローガンなんかも、お客様にはちゃんと伝わっていなかったのかもしれませんしね。」
 
藤田 「確かに、自社のことをどうやって伝えたらいいのかは、工務店自身には分かりにくいと思います。情報を整理し、ストーリーを考えて効果的に伝えるのがデザイナーの仕事なんですよね。シンボルマークの制作は、もう一度自社のことを見返す良い機会になりましたね。」
 
田中 「はい。あの時に、しっかりと整理できたと思います。」
 
藤田 「よかったです。伝えたいメッセージが整理されたことで、田中工務店のスローガンである『住み継ぐ家をつくり継ぐ』と、“田中の木組みが街並をつくる”という意味が込められたシンボルマーク、そしてロゴタイプがひとつになって、強いメッセージを発信できているんだと思います。田中工務店がどんな工務店なのか、良さ、らしさが伝わる最適なツールをつくって活用していくことが大切ですね。」
 
田中 「シンボルマークやスローガンが出来たことで、見学会のポスターや展示会用パネルや名刺・封筒等のアプリケーション・デザインもお願いしましたよね。建物のイメージとキャッチコピーだけで表現しているパネルは、家のつくり手を集めた展示会の中でも凄く目立ちました。一瞬でどんな家をつくっているかが伝わるパネルでしたからね。」
 
藤田 「そうですねー。田中さんは名刺の裏面にも内観の写真とスローガンを入れてつくりましたが、これも受け取ったお客様が、どんな家をつくっている工務店なのか一目でわかる様になっていますよね。ある工務店さんから聞いた話ですが、名刺を受け取ったお客様が『こういう名刺の工務店なら施工をお願いしたい』と言ってくださったそうなんです。やはり名刺ひとつでも、お客様には工務店が発しているメッセージや印象が伝わるということですね。」
 
田中 「確かに、それはあると思いますね。」
 
藤田 「その声を聞いて、制作者として嬉しくもありましたが、アプリケーション全てにおいてメッセージの伝わり方を丁寧に考えなければ、と改めて感じましたね。」
 
田中 「なるほど。同じメッセージを伝えるのに、ツールによって伝え方が変わるんですか?」
 
藤田 「そうなんです。お客様の理解にも段階がありますし、デザインには必ず目的やメッセージがあるんです。そこを考えずに表面的にツールをつくるだけでは、意味が伝わりませんよ。それではプロモーションとしての効果もありませんから。」
 
田中 「なるほど。」
 
藤田 「『美しい意匠と確かな性能を両立する』というメッセージが、お客様との接点で上手く積み重なって、『東京で住み続けられる木の家をつくるなら田中工務店』というイメージがお客様の心の中に構築できたんじゃないでしょうか?」
 
No.3へつづく  ▲ Interview No.3へ
 
 
 
 
 
 
 

No.3 どう伝えたら、どう思ってもらえるのか
 
田中 「やはり藤田さんと仕事をした中で、シンボルマークと性能ガイドブックをつくったことが一番大きかったと思います。
名古屋と埼玉の工務店と田中工務店の3社が持ち回りでプロモーション勉強会をやる機会があって、今のように国が定めた長期優良住宅という認定基準がまだ無い中でも家の“性能”が大切だということを僕たちは考えていたんです。各社独自性はあるものの、共通項があったので、それを藤田さんと野池政宏(※3)さんがまとめたものが性能ガイドブックでしたよね。」
 
藤田 「そうでしたね。実は性能ガイドブックの内容って、関心がある工務店はみんな取り組んでいたことなんですよね。それを目に見えるカタチにしていないからお客様へ伝わっていないだけで。そういう見えない“性能”をカタチにして伝えることはできないだろうかと、それがお客様から見た他の工務店との差異化になるんじゃないかと考えて、野池さんへ相談したのが性能ガイドブックの始まりなんです。」
 
田中 「性能を項目ごとにひも解いてまとめたのは画期的でしたね〜。」
 
藤田 「新しいプロモーションツールを開発できたということになるんですかね。」
 
田中 「そうだと思いますよ。その後につくったのが設計ルールブック。通常ならまず設計のことをはじめに冊子にまとめようするんですが、田中工務店の場合は、“性能”が先。そして “設計”。それが対になっているのが、ポイント!なんですよね。」
 
藤田 「以前は田中工務店ならではの設計力も、しっかりと伝わっていなかったと思うんですよね。プロモーションツール(パンフレット)で性能も設計もしっかりとやってくれる工務店だ!と家づくりの価値を明確に表現できたことで、お客様に共感していただき信頼に繋げることが出来たと思いますね。こうして強みを持てたのは、何よりもつくったツールを田中さんがしっかりと活用しているということが大きいと思います。」
 
田中 「ありがとうございます。」
 
藤田 「田中さんは、性能ガイドブックと設計ルールブックをお客様との接点のかなり早い段階で渡していますよね。それは、その2冊が田中工務店にとってのコンセプトブックになっているんじゃないかと思うんです。“意匠”と“性能”を両立させること、それが田中工務店のアイデンティティではないでしょうか。」
 
田中 「なるほど。確かに、つくったツールをどう活用していこうか、というのは常に考えてきたと思います。つい最近も、性能ガイドブックの内容について見直したいなと考えて藤田さんに依頼をしたところですよね。今までの性能ガイドブックは製本をしていなかったんですが、今度は冊子にまとめようと…。」
 
藤田 「最初に性能ガイドブックをつくってから何年も経っていますからね。もう一度見返して、次の段階へということですね。」
 
田中 「前へ進まなければいけませんからね。」
 
藤田 「今回振り返ってみて、田中さんとは沢山の仕事をさせていただきましたけど、その時その時の課題をしっかりと整理して解決に向かって“田中工務店らしさ”を表現してきたんだと感じました。」
 
田中 「こうやって振り返ると、プロモーションがスムーズにいったのは、藤田さんとの段階を重ねた信頼関係があったからこそですよね。」
 
藤田 「ありがとうございます。長い間一緒にお仕事させていただくということは本当に有り難いことだと思います。やはり、東京町家などの田中工務店以外の仕事にも関わることができて、常に田中さんと同じ方向を見て仕事に取り組んで来られたんじゃないかと思います。これからも同じ視点で歩みながらお手伝いができたらと思います。」
 
 2017年8月28日 田中工務店にて
 
 
 
 
 
 
 
 

株式会社田中工務店
東京江戸川区小岩に3代続く工務店。対象となる建築地の多くが都市部の狭小地でありながらも、意匠と性能の両立をモットーに、限られた空間に最良の質を有する住まいを提供。「長い時間で考える」という発想のもと、時の経過とともにその価値がますます明確になってくる住まいづくりをしている。
 
▶︎株式会社田中工務店ホームページ


※1)OMソーラー協会:現OMソーラー株式会社/「環境と共生する地域建設の創造」を理念に、もともと自然が持っている力を利用して熱と空気をデザインする、OMソーラーシステムを開発・販売する会社。ブルックスタジオは1990年〜2015年までキャンペーン、プロモーションに携わる。
※2)東京町家:東京の工務店3社恊働の「東京町家をつくる会」が提案する、狭小敷地でも自然の摂理に従った工夫で、快適な住宅。
※3)野池政宏:株式会社暮らし省エネルギー研究所 代表/一般社団法人Forward to 1985 energy life 代表理事/一般社団法人 パッシブデザイン協議会 代表理事/自立循環型住宅研究会 主宰 NPO法人 WOOD AC 理事/ウッドマイルズ研究会運営委員
その他、OMソーラー協会や全国のベンチマーク工務店のコンサルタント、販促ツールのプロモーションなど、住宅アナリスト。