第9話 地域の木の家のスタンダードになる
 
株式会社小林建設 小林 伸吾(埼玉県本庄市)

No.1 進むべき道が見えた
 
名古屋で行われたセミナーの帰りに小林社長が浜松に立ち寄ってくださいました。小林社長はこうして時々、「ついでに寄るよ」とブルックスタジオにおみえになります。ご本人は気軽に寄っている感覚のようですが…、スタッフ一同、毎回“緊張”の中でのお出迎えです。
今回は、こちらからの取材の申し込みにもかかわらず、「ついでに」お寄りいただきました。
 
藤田 「今日はわざわざおこし頂きまして…ありがとうございます。」
 
小林 「わざわざじゃないよ。『ついで』だから。」
 
藤田 「そうでしたね(笑)。」
 
小林 「あ〜…でも、浜松って“のぞみ”が通過しちゃうから“ひかり”で来たし、『わざわざ』になるのかな?」
 
藤田 「あはは。ほんとにわざわざありがとうございます。さっそくですが、このたびは2017年にオープンした『ギャラリーhinosumika』でグッドデザイン賞を受賞、おめでとうございます。」
 
小林 「どうも…ありがとうございます。」
 
藤田 「2007年『杉の家』、2013年『コバケンLaBO』に続いて3度目のグッドデザイン賞受賞ですね。小林建設の展示場すべての受賞は、地域工務店の中でも他にはない快挙ですよ。名実ともに地域工務店ナンバーワンじゃないですか。」
 
小林 「いやいや…それはちょっと言い過ぎだよ(笑)。そんなに褒められると汗が出てきますよ。でもね、やっぱりその時代、時代で注目されていることに常にアンテナを張って、それをカタチにできたことが結果に繋がったんじゃないかな。小林建設として『地元の木を使う』っていうのは絶対に外せないけどね。」
 
藤田 「そうですね。そこがブレないから評価されたんだと思います。それでは…、いよいよ出会いからブランディング、そしてプロモーションの話を詳しく伺いたいなと思います。」
 
小林 「小林建設が解剖されてくって感じだなぁ(笑)。」
 
藤田 「小林建設さんとの出会いは1996年だから…もう21年前になりますね。」
 
小林 「10年一昔っていうけど、二昔ってことか…。長い付き合いになっちゃったな。」
 
藤田 「なっちゃったって…(笑)。」
 
小林 「良い関係ですよね(笑)。二昔前か〜、こんなこというと言い訳みたいになるけど、僕にとって工務店っていうのは家業だから、そのころはあたりまえに朝から晩まで仕事して、経営の方向性とかブランディングなんて考える余裕はなかったんだよね。」
 
藤田 「家業ですか?代々守り続けるってことは、ご苦労もあったんでしょうね。」
 
小林 「うーん、色々とありますよ。でもそれが当たり前だから、苦ではなかったけどね。黙々と仕事に取り組んでいたある日、先代である父がOMソーラー(※1)の新聞広告を見て、僕に勧めてきたんです。」
 
藤田 「全国に発信した、新聞全15段広告ですね?」
 
小林 「そうそう、当時、藤田さんがデザインされたものです。それからOMの新聞広告やプロモーションツールを目にするようになって、自然エネルギーや、環境と共生するOMの家づくりに共感したわけです。それぞれのツールが、ひときわ引きつけるメッセージ性の強い垢抜けたもので、心に深くきざみこまれたって感じがしましたね。それと同時に、情報発信の重要性も感じて…」
 
藤田 「心に深くきざみこまれた、ですか。じゃあ、OMを知る前は、とくに情報発信されてなかったんですか?」
 
小林 「二昔以上前の話だからね。特にしていませんでしたね。だから、入会してからまずはOMソーラー協会が用意してくれたパンフレットやチラシを使うことから始めました。」
 
藤田 「チラシの効果はいかがでした?」
 
小林 「もちろん効果はありましたけど…。でもそこから数年して自分達の目指す方向性がハッキリとしてからですね、お客様へメッセージが正しく伝わっているな!という実感があったのは。」
 
藤田 「なるほど。小林さんが現在も一貫して伝えていることは、地元の材と地域の人財を使って木の家を建てる『地域性という軸』ですよね。それが方向性ということでしょうか。」
 
小林 「そうですね。その『地域性』に目覚めたのは、1999年に埼玉県で初めて県産材100%のOMソーラーの家をつくったときですね。小林建設にとっての転機とも言えるかも。さらにその頃、無垢材を使用した木の家や、自然素材が注目され始めたことも大きかったと思います。『現し(※2)』の工法が当時は斬新で高級感もあったんじゃないかな。」
 
藤田 「それがOMソーラーが先導した、いわゆる『近山運動(※3)』ですね。でもそれって、昔の日本では元々やっていたことでしょう?それが、時代が流れて、全国的な木材の伐採期とも重なって国産材の良さに世間が気づき、再登場したってことですか…。」
 
小林 「そうそう、まさに再登場。昔と比べて木材の乾燥の技術も進んだから、強くて良質な地域材を使った家を提供できるようになってきたんですよ。そして、土、紙、石などの自然素材も地元のものを使う。こういったネットワークが築けるのは地域に根付いた工務店だからこそなんですよね。」
 
藤田 「そこで地域工務店としての在り方に気づかれたわけですね。」
 
小林 「はい、本来、僕ら工務店はそう在るべきだったんでしょう。」
 
藤田 「そうですね。どんな企業でも必ず転機というものはあるはずですが、そのタイミングを逃さず確実に身にされて…、小林さんのチャンスを逃さない実践力の影響は絶大で、そのころから僕は、ただデザインの制作に携わるだけでは済まなくなっていきました。」
 
小林 「そう、僕もうすうす感じていましたよ(笑)。木材のことや気候風土のことまで見聞を広げて、熱心ですよね。それに藤田さんとは感性が近いんだと思うな。物の考え方や本質が合わないとこれだけ長い付き合いになれないから。」
 
藤田 「小林さんは常に鋭い視点で物事を見ているじゃないですか。『これで本当に効果がでるか?』と、制作物ひとつひとつにまっすぐ真剣に向き合ってこられるから、こちらもおのずと前向きになる。だから、うちのスタッフはみんないつも気を張って…『緊張』するんですよ。」
 
小林 「そんな!緊張しないで下さいよ(笑)。」
 
No.2へつづく ▲ Interview No.2へ
 
 
 
 
 

No.2 コミュニケーションを誘発させる
 
藤田 「小林建設が、2003年にオープンした展示場『杉の家』がまさに小林建設ならではの『地域性』をカタチにしたものですよね。」
 
小林 「そうですね。地元の杉の木をふんだんに使用して、無垢の木に囲まれた暮らしがいかに心地よいかを体感してもらえるようにしました。その展示場を『陽の栖(ひのすみか)』として、さらには藤田さんの提案で小林建設のブランドネームとしたわけです。」
 
藤田 「小林建設の家づくりの方向性が決まって、お客様とのコミュニケーションの場である展示場もできました。小林建設の家づくりとお客様を結びつけるコミュニケーションの中心になるものが必要だと感じて、ネーミングとシンボルマーク、ロゴタイプを提案させていただきました。」
 
小林 「ここから本格的に小林建設のブランディングが始まりましたよね。」
 
藤田 「はい、工務店のブランディングは、ゼロからじゃなくてマイナスからでした。」
 
小林 「当時はまだ工務店にいい家がつくれるのか?とか、建物はつくれるけど、センスが悪いとか。つくっている人が怖そうとか、そういったイメージでしたから。」
 
藤田 「そんなイメージから脱却して、小林建設の価値をわかりやすく伝えるには、単なる展示場の名前だけじゃ伝えきれないな。『陽の栖』をブランドネームにした方が良いんじゃないか?と感じたんです。」
 
小林 「そうでしたね。小林建設の家づくりのブランドネームとして展開していく際に、あのシンボルマークができたわけだよね。」
 
藤田 「そうです。『陽の栖』には太陽などの自然と融合した住空間という意味を込めて、コンセプトは、地域と家族のスタンダードになる家をつくり、守る。ブランドスローガンは「正直につくる木の家」。それで今のシンボルマークになったわけですが…」
 
小林 「最初見たときはびっくりしました。これが工務店のシンボルマークかって。」
 
藤田 「このシンボルは小林さんだからこそ使いこなせているんですよ。下手すると単なるイラストで終わってしまうと思います。」
 
小林 「僕だから使いこなせている、というと?」
 
藤田 「ブランドを成立させるためには、ネーミングやシンボルなどの核になるものをつくった後も、正しいメッセージを継続して伝えることが大切です。小林さんは、常にその発想を持ち、実行していると思います。」
 
小林 「『伝える』ではなく、『伝わる』がコミュニケーションということですね。」
 
藤田 「そうです。最適なコミュニケーションを築けたから、2007年に『杉の家』が地域工務店で初めてグッドデザイン賞を受賞されたんだと思います。しかもベスト100に入られて。いやぁ〜、そのときは感激しましたね。」
 
小林 「ありがとうございます。藤田さん、自分のことみたいに喜んでくれましたもんね(笑)。」
 
藤田 「もちろんですよ!出来上がった『モノ』だけが評価されたんじゃなくて、木材加工業者とのネットワークや、地元の杉の良さを伝え地場産業の発展に貢献しているという…まさに『陽の栖』のコンセプトが評価されたわけですから。」
 
小林 「時代にピッタリ当てはまったことも大きいでしょうね。」
 
藤田 「あれから周りからの見る目は…変わりましたか?」
 
小林 「どうでしょうか。きっと変わった部分もあるのかもしれませんが、それよりも自分達の気持ちの方が大きな変化がありました。『陽の栖』ができてからブランドを意識していたのはもちろんですけど、グッドデザイン賞を受賞して注目をされる分、小林建設のイメージをしっかりと統一していかなければならないな…とより強く感じましたね。」
 
藤田 「ブランディングの中で最も重要なのはそこです。小林さんはスタッフから職人の方すべてが、現場の整理整頓、現場シートや看板の魅せ方などありとあらゆる点で、常に『小林建設がお客様にどういう見え方をしているか』という目線でブランドを意識したプロモーションをしているから伝わる力が大きいんでしょうね。」
 
小林 「僕としては、藤田さんから常に客観的な意見を聞けているのも良いんだと思っています。」
 
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No.3 営業マン無しで行うプロモーション
 
藤田 「今回受賞した『ギャラリーhinosumika』のパンフレットを制作させていただきましたが、展示場でありながら、『ただいま』と帰って来たくなるような安らぎを感じる、落ちついた空間ですよね。」
 
小林 「おかげさまで、すでにとてもたくさんのお客様にご来場していただいて…。今回の展示場は『住み心地の良さ』を追求したゼロエネルギー準備住宅なんですよ。」
 
藤田 「準備住宅?あまり耳にしないですね。」
 
小林 「そうでしょう?でもZEH(※4)はよく聞くでしょ…」
 
(しばらくZEHの話で盛り上がる2人…)
 
小林 「…この話まだ続けてもいいの?」
 
藤田 「いいんです(笑)!でもこのまま続けていたら夜になってしまうかな?」
 
小林 「じゃあ、元に戻しましょう(笑)。でもなんだかんだいって、こうやって藤田さんは僕の専門分野のことを良く理解してくれようとしているでしょう?だからプロモーションツールをお願いしても、スムーズなんだよね。ギャラリーhinosumikaのパンフレットをお願いしたときも、各展示場のポジショニングやコンセプトを的確にまとめてくれたし…。」
 
藤田 「デザイナーは目的や伝えるべきことを理解していなければツールには落とし込めませんからね。ただ、お客様の目線で考えること。『これくらいはわかるだろう』という考えに陥ってしまわないように気をつけています。」
 
小林 「『これくらいはわかるだろう』ねぇ、それが一番怖いことだね。」
 
藤田 「僕はこうやって小林さんと会話をしているから小林建設のことを理解していますけど、お客様は展示場や見学会が『小林建設のつくる家』を理解する機会になるわけですよね?」
 
小林 「そうですね。お客様からみて、展示場は小林建設の考える“理想の家”。そして完成見学会は、実際に注文されたお客様の家…つまり “その家族の最適なカタチ”になりますね。」
 
藤田 「なるほど。目指しているところと現実の両方を見て理解してもらうわけですね。」
 
小林 「展示場は素材も見せ方も理想を目指してつくっているので、実際に全て取り入れるのは難しくても『こういうやり方もあるんだ』と参考にしていただけることも多いです。でも展示場を見てもらうだけで満足してはダメで。できれば一般的な建物を見て、より現実的になっていただきたい。」
 
藤田 「納得していただくには時間かかりますよね。納得していただけるコミュニケーションツールがあれば営業マンはいらないと、以前におっしゃっていましたが…」
 
小林 「ええ、営業マンはいません。見学会場に足を運んでくださるお客様には、誠心誠意『小林建設のつくる家』についてご説明します。その上でじっくり読み込める、わかり易いパンフレットを用意し、興味を持っていただいた方を勉強会にお誘いする。時間をかけて、良さを理解していただき、お客様のご希望にも寄り添う。…そういうことこそ何より大切にしたいと考えているんです。」
 
藤田 「家づくりを始めるときの知識や理解は、お客様によって違いますから、アプローチできる角度が増えるよう、色々なツールを用意しているんですね。小林さんはプロモーションをしっかりとコントロールされている。そこが素晴らしいなと思います。」
 
小林 「でもね、それこそ先程の話に戻りますが、『わかるだろう』の気持ちを捨てて伝わるしくみを考えないと…。家づくりにおいても、良いものをつくっているだけでは、お客様には気づいてもらえないんですよね。だから展示場や見学会で体感していただくことはとても大事なんです。」
 
藤田 「実際に体感してもらえる場があって、その上で『納得』していただけるようなコミュニケーションツールをしっかりと利用されているから、営業マンはいらないんですね。」
 
小林 「おっしゃるとおり。」
 
藤田 「そこが小林さんのこだわりですか…?」
 
小林 「そう、だから営業マンはいなくても、ここ数年で、設計も性能も施工もしっかりとやってくれる工務店だと明確に伝わっているな、という実感があります。」
 
藤田 「それは、地域工務店として小林建設がお客様の目線で『良いと思える会社か』ということを考え、伝え続けてきたからです。ブランドをつくって終わり…ではなくて、常に上を目指すこと、伝えること、良いお客様に出会うことを考えた結果、『陽の栖』というブランドも確立されたんだと思います。」
 
小林 「きっとこれからも、お客様の意識は変化していくんでしょう。その中で、地域工務店の小林建設として在るべき姿を常に考えていきたいですね。」
 
藤田 「そう言えば…話しは飛びますけど、何年か前に、東京駅で『陽の栖』のトートバックを持っている小学生を見かけたんです。塾の帰りかな?本や参考書がぎっしり詰まって…。思いがけないところで目にしたので、一瞬ハッとして、そのあと何だか嬉しくなったのを急に思い出しました。」
 
小林 「へぇ!そうですか。そういう風に使っていただけるって幸せですね。あの素材、藤田さんが言う通り、不織布にしなくて良かったなぁ。しっかりした素材だったから簡単に捨てられずに、ショッピングバックにしたりして長く使ってくれる方もいます。そういうのって嬉しいですね。」
 
藤田 「そうですね。あのトートバックは資料を持ち帰られるお客様へお渡しするものなので冊数も多く重たいだろうと、しっかりした帆布でつくったんですよね。プロモーションツールはお客様への気遣いが大事です。小林さんのそういう気遣いがあってこそのブランドですよ。ですから、今日来てくださった『ついで』も僕にとっては素敵な気遣いなんです。」
 
小林 「そうか…ではまた近々、『ついで』に寄りますね。」
 
藤田 「お待ちしています!」
 
2017年11月7日ブルックスタジオにて
 
 
 
 

No.1 進むべき道が見えた
 
名古屋で行われたセミナーの帰りに小林社長が浜松に立ち寄ってくださいました。小林社長はこうして時々、「ついでに寄るよ」とブルックスタジオにおみえになります。ご本人は気軽に寄っている感覚のようですが…、スタッフ一同、毎回“緊張”の中でのお出迎えです。
今回は、こちらからの取材の申し込みにもかかわらず、「ついでに」お寄りいただきました。
 
藤田 「今日はわざわざおこし頂きまして…ありがとうございます。」
 
小林 「わざわざじゃないよ。『ついで』だから。」
 
藤田 「そうでしたね(笑)。」
 
小林 「あ〜…でも、浜松って“のぞみ”が通過しちゃうから“ひかり”で来たし、『わざわざ』になるのかな?」
 
藤田 「あはは。ほんとにわざわざありがとうございます。さっそくですが、このたびは2017年にオープンした『ギャラリーhinosumika』でグッドデザイン賞を受賞、おめでとうございます。」
 
小林 「どうも…ありがとうございます。」
 
藤田 「2007年『杉の家』、2013年『コバケンLaBO』に続いて3度目のグッドデザイン賞受賞ですね。小林建設の展示場すべての受賞は、地域工務店の中でも他にはない快挙ですよ。名実ともに地域工務店ナンバーワンじゃないですか。」
 
小林 「いやいや…それはちょっと言い過ぎだよ(笑)。そんなに褒められると汗が出てきますよ。でもね、やっぱりその時代、時代で注目されていることに常にアンテナを張って、それをカタチにできたことが結果に繋がったんじゃないかな。小林建設として『地元の木を使う』っていうのは絶対に外せないけどね。」
 
藤田 「そうですね。そこがブレないから評価されたんだと思います。それでは…、いよいよ出会いからブランディング、そしてプロモーションの話を詳しく伺いたいなと思います。」
 
小林 「小林建設が解剖されてくって感じだなぁ(笑)。」
 
藤田 「小林建設さんとの出会いは1996年だから…もう21年前になりますね。」
 
小林 「10年一昔っていうけど、二昔ってことか…。長い付き合いになっちゃったな。」
 
藤田 「なっちゃったって…(笑)。」
 
小林 「良い関係ですよね(笑)。二昔前か〜、こんなこというと言い訳みたいになるけど、僕にとって工務店っていうのは家業だから、そのころはあたりまえに朝から晩まで仕事して、経営の方向性とかブランディングなんて考える余裕はなかったんだよね。」
 
藤田 「家業ですか?代々守り続けるってことは、ご苦労もあったんでしょうね。」
 
小林 「うーん、色々とありますよ。でもそれが当たり前だから、苦ではなかったけどね。黙々と仕事に取り組んでいたある日、先代である父がOMソーラー(※1)の新聞広告を見て、僕に勧めてきたんです。」
 
藤田 「全国に発信した、新聞全15段広告ですね?」
 
小林 「そうそう、当時、藤田さんがデザインされたものです。それからOMの新聞広告やプロモーションツールを目にするようになって、自然エネルギーや、環境と共生するOMの家づくりに共感したわけです。それぞれのツールが、ひときわ引きつけるメッセージ性の強い垢抜けたもので、心に深くきざみこまれたって感じがしましたね。それと同時に、情報発信の重要性も感じて…」
 
藤田 「心に深くきざみこまれた、ですか。じゃあ、OMを知る前は、とくに情報発信されてなかったんですか?」
 
小林 「二昔以上前の話だからね。特にしていませんでしたね。だから、入会してからまずはOMソーラー協会が用意してくれたパンフレットやチラシを使うことから始めました。」
 
藤田 「チラシの効果はいかがでした?」
 
小林 「もちろん効果はありましたけど…。でもそこから数年して自分達の目指す方向性がハッキリとしてからですね、お客様へメッセージが正しく伝わっているな!という実感があったのは。」
 
藤田 「なるほど。小林さんが現在も一貫して伝えていることは、地元の材と地域の人財を使って木の家を建てる『地域性という軸』ですよね。それが方向性ということでしょうか。」
 
小林 「そうですね。その『地域性』に目覚めたのは、1999年に埼玉県で初めて県産材100%のOMソーラーの家をつくったときですね。小林建設にとっての転機とも言えるかも。さらにその頃、無垢材を使用した木の家や、自然素材が注目され始めたことも大きかったと思います。『現し(※2)』の工法が当時は斬新で高級感もあったんじゃないかな。」
 
藤田 「それがOMソーラーが先導した、いわゆる『近山運動(※3)』ですね。でもそれって、昔の日本では元々やっていたことでしょう?それが、時代が流れて、全国的な木材の伐採期とも重なって国産材の良さに世間が気づき、再登場したってことですか…。」
 
小林 「そうそう、まさに再登場。昔と比べて木材の乾燥の技術も進んだから、強くて良質な地域材を使った家を提供できるようになってきたんですよ。そして、土、紙、石などの自然素材も地元のものを使う。こういったネットワークが築けるのは地域に根付いた工務店だからこそなんですよね。」
 
藤田 「そこで地域工務店としての在り方に気づかれたわけですね。」
 
小林 「はい、本来、僕ら工務店はそう在るべきだったんでしょう。」
 
藤田 「そうですね。どんな企業でも必ず転機というものはあるはずですが、そのタイミングを逃さず確実に身にされて…、小林さんのチャンスを逃さない実践力の影響は絶大で、そのころから僕は、ただデザインの制作に携わるだけでは済まなくなっていきました。」
 
小林 「そう、僕もうすうす感じていましたよ(笑)。木材のことや気候風土のことまで見聞を広げて、熱心ですよね。それに藤田さんとは感性が近いんだと思うな。物の考え方や本質が合わないとこれだけ長い付き合いになれないから。」
 
藤田 「小林さんは常に鋭い視点で物事を見ているじゃないですか。『これで本当に効果がでるか?』と、制作物ひとつひとつにまっすぐ真剣に向き合ってこられるから、こちらもおのずと前向きになる。だから、うちのスタッフはみんないつも気を張って…『緊張』するんですよ。」
 
小林 「そんな!緊張しないで下さいよ(笑)。」
 
No.2へつづく ▲ Interview No.2へ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

No.2 コミュニケーションを誘発させる
 
藤田 「小林建設が、2003年にオープンした展示場『杉の家』がまさに小林建設ならではの『地域性』をカタチにしたものですよね。」
 
小林 「そうですね。地元の杉の木をふんだんに使用して、無垢の木に囲まれた暮らしがいかに心地よいかを体感してもらえるようにしました。その展示場を『陽の栖(ひのすみか)』として、さらには藤田さんの提案で小林建設のブランドネームとしたわけです。」
 
藤田 「小林建設の家づくりの方向性が決まって、お客様とのコミュニケーションの場である展示場もできました。小林建設の家づくりとお客様を結びつけるコミュニケーションの中心になるものが必要だと感じて、ネーミングとシンボルマーク、ロゴタイプを提案させていただきました。」
 
小林 「ここから本格的に小林建設のブランディングが始まりましたよね。」
 
藤田 「はい、工務店のブランディングは、ゼロからじゃなくてマイナスからでした。」
 
小林 「当時はまだ工務店にいい家がつくれるのか?とか、建物はつくれるけど、センスが悪いとか。つくっている人が怖そうとか、そういったイメージでしたから。」
 
藤田 「そんなイメージから脱却して、小林建設の価値をわかりやすく伝えるには、単なる展示場の名前だけじゃ伝えきれないな。『陽の栖』をブランドネームにした方が良いんじゃないか?と感じたんです。」
 
小林 「そうでしたね。小林建設の家づくりのブランドネームとして展開していく際に、あのシンボルマークができたわけだよね。」
 
藤田 「そうです。『陽の栖』には太陽などの自然と融合した住空間という意味を込めて、コンセプトは、地域と家族のスタンダードになる家をつくり、守る。ブランドスローガンは「正直につくる木の家」。それで今のシンボルマークになったわけですが…」
 
小林 「最初見たときはびっくりしました。これが工務店のシンボルマークかって。」
 
藤田 「このシンボルは小林さんだからこそ使いこなせているんですよ。下手すると単なるイラストで終わってしまうと思います。」
 
小林 「僕だから使いこなせている、というと?」
 
藤田 「ブランドを成立させるためには、ネーミングやシンボルなどの核になるものをつくった後も、正しいメッセージを継続して伝えることが大切です。小林さんは、常にその発想を持ち、実行していると思います。」
 
小林 「『伝える』ではなく、『伝わる』がコミュニケーションということですね。」
 
藤田 「そうです。最適なコミュニケーションを築けたから、2007年に『杉の家』が地域工務店で初めてグッドデザイン賞を受賞されたんだと思います。しかもベスト100に入られて。いやぁ〜、そのときは感激しましたね。」
 
小林 「ありがとうございます。藤田さん、自分のことみたいに喜んでくれましたもんね(笑)。」
 
藤田 「もちろんですよ!出来上がった『モノ』だけが評価されたんじゃなくて、木材加工業者とのネットワークや、地元の杉の良さを伝え地場産業の発展に貢献しているという…まさに『陽の栖』のコンセプトが評価されたわけですから。」
 
小林 「時代にピッタリ当てはまったことも大きいでしょうね。」
 
藤田 「あれから周りからの見る目は…変わりましたか?」
 
小林 「どうでしょうか。きっと変わった部分もあるのかもしれませんが、それよりも自分達の気持ちの方が大きな変化がありました。『陽の栖』ができてからブランドを意識していたのはもちろんですけど、グッドデザイン賞を受賞して注目をされる分、小林建設のイメージをしっかりと統一していかなければならないな…とより強く感じましたね。」
 
藤田 「ブランディングの中で最も重要なのはそこです。小林さんはスタッフから職人の方すべてが、現場の整理整頓、現場シートや看板の魅せ方などありとあらゆる点で、常に『小林建設がお客様にどういう見え方をしているか』という目線でブランドを意識したプロモーションをしているから伝わる力が大きいんでしょうね。」
 
小林 「僕としては、藤田さんから常に客観的な意見を聞けているのも良いんだと思っています。」
 
No.3へつづく  ▲ Interview No.3へ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

No.3 営業マン無しで行うプロモーション
 
藤田 「今回受賞した『ギャラリーhinosumika』のパンフレットを制作させていただきましたが、展示場でありながら、『ただいま』と帰って来たくなるような安らぎを感じる、落ちついた空間ですよね。」
 
小林 「おかげさまで、すでにとてもたくさんのお客様にご来場していただいて…。今回の展示場は『住み心地の良さ』を追求したゼロエネルギー準備住宅なんですよ。」
 
藤田 「準備住宅?あまり耳にしないですね。」
 
小林 「そうでしょう?でもZEH(※4)はよく聞くでしょ…」
 
(しばらくZEHの話で盛り上がる2人…)
 
小林 「…この話まだ続けてもいいの?」
 
藤田 「いいんです(笑)!でもこのまま続けていたら夜になってしまうかな?」
 
小林 「じゃあ、元に戻しましょう(笑)。でもなんだかんだいって、こうやって藤田さんは僕の専門分野のことを良く理解してくれようとしているでしょう?だからプロモーションツールをお願いしても、スムーズなんだよね。ギャラリーhinosumikaのパンフレットをお願いしたときも、各展示場のポジショニングやコンセプトを的確にまとめてくれたし…。」
 
藤田 「デザイナーは目的や伝えるべきことを理解していなければツールには落とし込めませんからね。ただ、お客様の目線で考えること。『これくらいはわかるだろう』という考えに陥ってしまわないように気をつけています。」
 
小林 「『これくらいはわかるだろう』ねぇ、それが一番怖いことだね。」
 
藤田 「僕はこうやって小林さんと会話をしているから小林建設のことを理解していますけど、お客様は展示場や見学会が『小林建設のつくる家』を理解する機会になるわけですよね?」
 
小林 「そうですね。お客様からみて、展示場は小林建設の考える“理想の家”。そして完成見学会は、実際に注文されたお客様の家…つまり “その家族の最適なカタチ”になりますね。」
 
藤田 「なるほど。目指しているところと現実の両方を見て理解してもらうわけですね。」
 
小林 「展示場は素材も見せ方も理想を目指してつくっているので、実際に全て取り入れるのは難しくても『こういうやり方もあるんだ』と参考にしていただけることも多いです。でも展示場を見てもらうだけで満足してはダメで。できれば一般的な建物を見て、より現実的になっていただきたい。」
 
藤田 「納得していただくには時間かかりますよね。納得していただけるコミュニケーションツールがあれば営業マンはいらないと、以前におっしゃっていましたが…」
 
小林 「ええ、営業マンはいません。見学会場に足を運んでくださるお客様には、誠心誠意『小林建設のつくる家』についてご説明します。その上でじっくり読み込める、わかり易いパンフレットを用意し、興味を持っていただいた方を勉強会にお誘いする。時間をかけて、良さを理解していただき、お客様のご希望にも寄り添う。…そういうことこそ何より大切にしたいと考えているんです。」
 
藤田 「家づくりを始めるときの知識や理解は、お客様によって違いますから、アプローチできる角度が増えるよう、色々なツールを用意しているんですね。小林さんはプロモーションをしっかりとコントロールされている。そこが素晴らしいなと思います。」
 
小林 「でもね、それこそ先程の話に戻りますが、『わかるだろう』の気持ちを捨てて伝わるしくみを考えないと…。家づくりにおいても、良いものをつくっているだけでは、お客様には気づいてもらえないんですよね。だから展示場や見学会で体感していただくことはとても大事なんです。」
 
藤田 「実際に体感してもらえる場があって、その上で『納得』していただけるようなコミュニケーションツールをしっかりと利用されているから、営業マンはいらないんですね。」
 
小林 「おっしゃるとおり。」
 
藤田 「そこが小林さんのこだわりですか…?」
 
小林 「そう、だから営業マンはいなくても、ここ数年で、設計も性能も施工もしっかりとやってくれる工務店だと明確に伝わっているな、という実感があります。」
 
藤田 「それは、地域工務店として小林建設がお客様の目線で『良いと思える会社か』ということを考え、伝え続けてきたからです。ブランドをつくって終わり…ではなくて、常に上を目指すこと、伝えること、良いお客様に出会うことを考えた結果、『陽の栖』というブランドも確立されたんだと思います。」
 
小林 「きっとこれからも、お客様の意識は変化していくんでしょう。その中で、地域工務店の小林建設として在るべき姿を常に考えていきたいですね。」
 
藤田 「そう言えば…話しは飛びますけど、何年か前に、東京駅で『陽の栖』のトートバックを持っている小学生を見かけたんです。塾の帰りかな?本や参考書がぎっしり詰まって…。思いがけないところで目にしたので、一瞬ハッとして、そのあと何だか嬉しくなったのを急に思い出しました。」
 
小林 「へぇ!そうですか。そういう風に使っていただけるって幸せですね。あの素材、藤田さんが言う通り、不織布にしなくて良かったなぁ。しっかりした素材だったから簡単に捨てられずに、ショッピングバックにしたりして長く使ってくれる方もいます。そういうのって嬉しいですね。」
 
藤田 「そうですね。あのトートバックは資料を持ち帰られるお客様へお渡しするものなので冊数も多く重たいだろうと、しっかりした帆布でつくったんですよね。プロモーションツールはお客様への気遣いが大事です。小林さんのそういう気遣いがあってこそのブランドですよ。ですから、今日来てくださった『ついで』も僕にとっては素敵な気遣いなんです。」
 
小林 「そうか…ではまた近々、『ついで』に寄りますね。」
 
藤田 「お待ちしています!」
 
2017年11月7日ブルックスタジオにて
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ブルックスタジオ制作実例
>小林建設
 

株式会社小林建設
 
埼玉県本庄市に3代続く地域工務店として、地元の財を活かし、地域に根ざす家づくりをしている。「正直につくる木の家」をブランドスローガンに、OMソーラーやパッシブデザインを取り入れた、心地よく美しい木の家をデザインし、ただ一つのかけがえのない「栖」を提供。
 2007年『杉の家』、2013年『コバケンLaBO』、2017年『ギャラリーhinosumika』でグッドデザイン賞受賞。
 
▶︎小林建設ホームページ


※1)OMソーラー協会:現OMソーラー株式会社/「環境と共生する地域建設の創造」を理念に、もともと自然が持っている力を利用して熱と空気をデザインする、OMソーラーシステムを開発・販売する会社。ブルックスタジオは1990年〜2015年までキャンペーン、プロモーションに携わる。
※2)「現し(あらわし)」工法:日本の伝統的な木造工法で、普通は仕上げ材によって隠してしまう真壁や梁の木材をそのまま露出させた仕上げとする工法。
※3)近山運動:近くの山の木で家をつくる運動
※4)ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、住まいの断熱性などを上げてエネルギーのムダを省いた「省エネ」と、太陽光発電などによる「創エネ」を組み合わせて、一年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅。