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第7話 産学官連携をデザインする。

遠州食品加工業協同組合 理事長/株式会社魚秀 岡安 俊成氏(静岡県浜松市)
 

No.3 産学官連携から生まれた商品開発

岡安 「浜名湖おでん」は、魚秀の味をそのままお持ち帰りいただきたいと考え、生まれた商品です。常温で長期間保存可能な浜名湖のお土産を商品開発しました。うなぎの蒲焼きを練り物で巻いた「うなぎ巻」と、「うなぎエキス」を練り込んだはんぺん。浜名湖ならではの味を楽しめる具材が6種類入ったレトルトおでんです。
 
藤田 岡安さんは「魚秀ならではの商品をつくりたい」とずっとおっしゃっていましたよね。大成功だったんじゃないでしょうか。
 
岡安 ありがとうございます。今では、「浜名湖おでん」がきっかけとなって、魚秀の練り物のほとんどに「うなぎエキス」を入れるようになりました。そういえば、「うなぎエキス」をアピールした方がいいんじゃないかと提案してくださったのは藤田さんでしたね。
 
藤田 「エキス」というと、「効くー」って感じがしませんか?
 
岡安 そうですね(笑)。ネーミングの「浜名湖おでん」も、一緒に考えていただきましたね。最初は「浜松おでん」にしようかと思っていましたが、「浜名湖」にしたことで、広がりと舞阪で生まれた魚秀らしさも伝わったと思います。
 
藤田 産学官連携のコラボレーションでの学生の役割は、「うなぎエキス」入りの「浜名湖おでん」の売り方とパッケージのデザインの制作でした。授業の最初に、オリエンテーションで試食をさせていただきましたよね。おでんを土鍋いっぱいにして。
 
岡安 学生さんたちがおいしいと喜んでくれて嬉しかったですね。
 
藤田 企業から直接お話を聞けるだけでなく、試食までさせてもらい刺激になったと思います。実際の商品を味わってみることで、課題へ取り組む意識も高まったはずです。オリエンテーションからプレゼンテーションを振り返ってどうでしたか?
 
岡安 先ほどのお話にも出ましたが、やはり、どの学生さんも「誰が」「誰に」「何を」の部分をよーく考えて提案してくれたことが印象に残っていますね。パッケージをつくっていくときに、こんなふうにお客様のことを想像することは経験がなかったものですから、すごく新鮮でしたよ。
  
藤田 デザインで「商品が売れる」をつくり出せるといっても、みなさんピンと来ないようなんですよね。おいしくなければ売れないのは当たり前ですが、それ以前に「おいしそう」と思わなければ買わないし、買って実際に食べてみないと「おいしい」は生まれません。お客様の「おいしい」までの道のりを考えるのがデザイナーの仕事なんです。
 
岡安 なるほど。スーパーで並んでいる商品をお客様が見たときに、買いたいなって思わせるのがパッケージやネーミングなんですね。デザインも商品の一部、メッセージの表現ということでしょうか。
 
藤田 その通りです。それから、お客様は商品を買うときに誰がつくっているものなのかを感じ取ろうとしています。だから、学生には必ず「誰が」「誰に」をじっくり考えさせます。「誰が」どんなメッセージを発信しているのか、という部分は受け手にとってすごく大切なことなんです。
 
岡安 学生さんの最終プレゼンテーションのときは、おでんはまだ商品化の途中段階でしたので、実際のパッケージに採用することは叶わなかったわけですが、産学官連携に取り組んだことで商品化のためのいろいろなヒントをいただくことができました。
 
藤田 「でも、浜名湖おでんの商品開発が大変だったのはそれからでしたね。」
 
岡安 はい。おでんについては、具材やスープの味など、さらに試行錯誤を重ねる中で、うなぎエキスだけではインパクトが足りないんじゃないかという意見が出て、浜名湖産のうなぎの蒲焼きを練り物で巻くことになりました。
 
藤田 「うなぎ巻」には、度肝を抜かれました。これはいけると思いました。商品をブランディングする際に根幹になるのは、商品に対する絶対的な自信に他ならないと思います。魚秀さんは70年という歴史があって、独自の製法で丁寧に丁寧につくり続けてこられた。そこに試行錯誤してつくられた新商品「浜名湖おでん」が加わったんですね。
 
岡安 「うなぎ巻」を中心に、「浜名湖おでん」がカタチになっていきました。そんな中、お土産用として商品化が決まり改めてパッケージ制作をお願いすることになりました。
 
藤田 「うなぎ巻」にすべてが詰まっていると思ったので、パッケージはうなぎ巻の断面をしっかり見せることにしました。立てたまま展示できるPOPをかねたデザインで、お土産として持ち帰りやすいように取っ手をつけたこともポイントです。シンボルマークも、魚秀さんの元々の魚のマークにうなぎを加えて一目でわかるようにしました。
 
岡安 パッケージもインパクトがあって気に入っていますし、このシンボルマークで、魚秀とうなぎのイメージがつながっていくと嬉しいですね。
 
藤田 本当に様々なところで見掛けるようになりましたよね。産学官連携の最終目的は、それが社会とつながって、経済として成り立っていくということです。
 
岡安 はい。「浜名湖おでん」を手に取っていただいて、「おいしい」と言ってくださるお客様がいる。すごく幸せなことです。この産学官連携の取り組みは、素晴らしい結果を生み出したんじゃないかなあ。魚秀として、「白はんぺん」という看板商品に加えて「うなぎ巻」という看板商品ができた。これからも永く愛される商品として育てていきたいと思っています。
 
2017年11月30日魚秀本社にて

     

 



ブルックスタジオ制作実例

>遠州食品加工業協同組合
>浜名湖おでん

 

遠州食品加工業協同組合(遠食)

2013年6月 遠州地域の食文化の伝承と地域の食品産業の発展を目的として、静岡県西部地区を中心とした和菓子や練り物などの地元の食品加工業会社32社で組織する協同組合。
 
▶︎遠州食品加工業協同組合ブログ


株式会社魚秀

静岡県浜松市西区舞阪町の練り物製造会社。創業70年、伝統の技を受け継ぎ、はんぺんをはじめとした魚肉練製品(蒲鉾・すりみ・揚半など)を製造している。こだわりの「蒸しはんぺん」は、魚本来の旨みを閉じ込めるため、創業以来一貫して『蒸し』の製法をとっている。また、水産物(あさり・ちりめん・のりなど)の取り扱いも行っている。
 
▶︎株式会社魚秀ホームページ

 


 
※1)CI[コーポレート・アイデンティティ]:企業の社内意識と、社外からの企業イメージが、同一化された状態のこと。目標とする企業イメージを確立させ社会に伝えていき、企業のブランド価値や認知度を高めることで、企業の業績を向上させることがCIの役割である。 また、企業内でもアイデンティティを確立・共有し、社員の心のよりどころや誇りとなる役割もある。
※2)デザインマニュアル:基本的な考え方と具体的な展開基準を示すもの。コーポレートシンボルやコーポレートカラーなど一貫して変わらない基本要素の使用規定、また、アプリケーションの各種のアイテムに展開されていくときの基本的な使用規定が整理される。これにより、デザインシステムの水準を一定に維持することができる。

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