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第2話。ブランド体験の場をつくる。

富士木材株式会社 代表取締役社長 川口 祐介氏(静岡県富士市)
 

No.2 ネーミングとロゴマークに伝わる大きな力を織り込む

川口 ここまでブレずにやってこられたのは、ネーミングの力も大きいと思っています。ネーミングがコンセプトそのものですから。当初、フィンランド語で「楽しむ」という意味を持つ「ハウスカ」をヒントに、「木の暮らし」をもじって「キノクラスカ」にしようかと考えていたのですが、藤田さんから「キノ」より「キト」の方がいいのでは、という意見をいただいて。
  
藤田 ええ。「キノ」より「キト」の方がはっきりした意思が感じられて、耳に残ると思ったんです。表記は、カタカナやひらがなにしてみたり、「木」や「暮」を漢字にしてみたり。活字の組み合わせでいろいろ試した結果、最終的に[キト暮ラスカ]をご提案させていただきました。  
 
川口 そうでしたね。ショップとしての気軽さは狙いつつ、でも名前にはやっぱりこだわりたい。最初はカッコイイ名前を付けようなんて考えていましたが(笑)、「暮らし方」と「フジモクの木」が結びついた名前になったのは嬉しかったですね。
 
藤田 ところが、ほとんどネーミングも決まり、いざロゴマークをつくろうとしたときに、川口さんからご相談いただいたんですよね。 
 
川口 そうなんです。実は、周りの人に「[キト暮ラスカ]と[フジモクの家]と[富士木材]がどういう関係かわかりにくいから[フジモク]でいいじゃないの」と言われてしまって。確かにフジモクでも間違いではないけれど、それだと敷居が高くて来てもらえないかもしれない。素敵な木の暮らしのご提案を発信するためには、フジモクの名前を出さないでいきたかったんですが・・・。
 
藤田 そこから、再度ポジショニングマップをつくり直して、[キト暮ラスカ]と[フジモクの家]と[富士木材]の関係をもう一度整理したんですよね。 
 
川口 そう、そうでしたね。あの段階があったからこそ、改めて[キト暮ラスカ]というネーミングに納得することができたと思っています。 
 
藤田 僕は、[富士木材]という社名がバックボーンにあることが良いことだと思っていました。[フジモクの家]は、地域の木材を使う家づくりの会社として軸がちゃんとしている。だからこそ、[キト暮ラスカ]という聞き慣れないネーミングでも成立したのだと思いますよ。
  
川口 聞き慣れない名前だからこそ、逆に注目されたりもするんですよ。その流れで「キト暮ラスカっていうのはね・・・」というお話ができる。藤田さんがつくってくださったロゴマークも含めて、すごく気に入っています。 
 
藤田 相談を受けたときに、自然素材の心地良さが広がるやわらかな空気感を体感できる空間があるのはのは素敵だなあと思っていたんです。すっきりして北欧らしい、あまり奇をてらわずに心地良い空気感もロゴマークに表していきたいと考えました。[キト暮ラスカ]というネーミング自体が聞き慣れないので、あまり余分な装飾を加えると違ったイメージを与えてしまうと思い、なるべくシンプルに仕上げました。細めのゴシックのロゴタイプの上にフィンランドブルーの太めのラインを入れて、アテンションとして、真ん中にアスタリスクマークを入れました。 
 
川口 フィンランドブルーの太めのラインとアスタリスクマーク、これが良かった。自分の中でもしっくりきました。 
 
藤田 ロゴマークは、会社やサービスを支える大黒柱のようなものですから、きちんと決まれば社内にも理念が浸透しやすくなります。結果、みなさん一丸となって[キト暮ラスカ]を成功させるイメージが湧いてきたように思います。ロゴマークが生まれた経緯や想い、込められたストーリーが熱いほど対外的な印象も重厚になると思います。メッセージが「自分らしい素敵な木の暮らしができる」というストーリーとしてお客様の情緒に伝わったからこそ、理解され、信頼され、人気が出たんでしょうね。 
 
川口 ネーミング、ロゴマークや空間が出来上がったことで、だんだん自分たちの意識も変わりましたね。確かに社内にも理念が浸透してスタッフが一丸となりました。「暮らしの提案」を自分たちがしていく立場としての意識が変わってきたのかなと思いますね。 
 
藤田 一概には言えませんが、地域工務店さんの中には、家づくりの技術へのこだわりが強い反面、お客様にどう訴えるかというプロモーションの部分が疎かになることがあるんですね。それでは工務店のマーケティングは成り立ちません。でも川口さんは、お客様の視点を常に意識されていますよね。お客様に何がどう伝われば良いのかということを。たとえばネーミングにこだわったように。
  
川口 そうですね。私にとってお客様にどう感じていただけるかというのは本当に大事なところです。藤田さんには、[キト暮ラスカ]に取り組む以前にもフジモクの家のパンフレットを制作していただきましたが、そのときも我々の家づくりのイメージを的確に表現してくださったので、メッセージの部分やそれを表現するデザインは専門家の力を借りるべきだと実感していたんです。
 
藤田 ネーミングとロゴマークは、最小限の情報に触れることで、人の心に最大限の力を発揮させることができるものだと思います。伝えるということは、相手の想像力を信じるということなんです。 
 
川口 なるほど。 
 
藤田 対象を深く掘り下げて、芯になる価値を最大限に引き出して、その魅力を的確に表現するのがデザイナーの仕事ですから。デザインが正しく機能すれば、数秒とかからずに相手の心の中まで到達すると思います。

     

 



ブルックスタジオ制作実例

>キト暮ラスカ

 

富士木材株式会社(フジモク)

1913年(大正2年)に川口材木店として創業。富士山麓の御用林から木を伐り出して製材するなど地域の木材を供給することを生業とした時代から、様々な木材(ヒノキ、スギから海外の米マツ、北洋カラマツなど)を扱う経験を経て、1975年(昭和50年)に木の家づくりをスタート。
 
▶︎フジモクの家ホームページ
▶︎富士木材株式会社ホームページ

 


 
※1)キト暮ラスカ:2014年2月に富士木材の新しい住宅ショールームとして誕生。ショールームやギャラリー、ショップにキッズルーム、木の工房や家づくりの資料館など、心地良い住まいとその暮らしから生まれる楽しみを様々なカタチで届けている。
※2)フジモクの家:富士木材株式会社 住宅部門のブランド名。フジモクの家は一本一本の木との出会いを大事にして、地域に根ざした快適で豊かな暮らしの提供に取り組んでいる。

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