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第8話 いのちの森を未来へ。

NPO 時ノ寿の森クラブ 理事長 松浦 成夫氏(静岡県掛川市)
 

 No.2 森の資源×デザイン

松浦 藤田さんがクラブの活動に参画してくださったのは、2014年の春。「森の集会所※1」の落成の前でしたね。
 
藤田 そうですね。4年前になります。
 
松浦 その頃、源流部の廃村跡からスタートした「いのちの森を守る森づくり」は、徐々に流域を巻き込んだ活動に発展してきていました。その上でより一層、多面的な機能を発揮する森林再生と維持活動のために、森の集会所の落成を新たな出発点として、時ノ寿の森の大事な財産を守り、次の世代に引き継いでいきたいと考えていたんですよ。
 
藤田 新たな決意を抱いていたんですね。初めてお会いしたときにものすごい情熱を感じたんですよ。失礼ながら、とても年上の方とは思えない程の熱意を感じました。僕もつられてアドレナリンが大放出でしたね(笑)。
 
松浦 あのときは、すごいテンポで会話が弾みましたよね(笑)。とても楽しい時間だったと記憶しています。お話をしていて、なんだか通じるものを感じたからかな? この先、時ノ寿の森が持っている資源の価値を広めてくれる人に出会った! なんて勝手に妄想をしていました。
 
藤田 そうだったんですか。僕は、NPOの活動は初めてなので、単純に「面白そうだな」という気持ちで協力させていただいたんです。当時は里山を取り巻く問題についても深く理解していませんでした。
 
松浦 それで良かったんですよ。NPOの存在意義は、国や自治体ができない社会的課題を市民の力で解決していくことですが、その活動の多くが一般的に知られていません。そこで活動する人が「楽しみながら社会に良い活動をしている」ということをもっと多くの人に発信していくために、藤田さんに参画をお願いしました。NPOの内側からではなく、外側からの視点が必要だったんです。
 
藤田 NPOの活動も企業活動も課題解決という根っこは同じ。森が持つあらゆる資源にデザインの思考を取り入れて「共感」を伝播していく。これもひとつの課題解決になるのかな・・・と。それなら僕もデザイナーとしてお役に立てるんじゃないかと思いました。
 
松浦 「森の資源×デザイン」という発想ですね。我々にはそういう発想も視点もありませんでした。
 
藤田 時ノ寿の森クラブの本質的な価値を、仕組みによってカタチにして伝えていこうと考えたんです。
 
松浦 なるほど。「山からまちへの木づかいプロジェクト」というネーミングも藤田さんの提案でしたね。
 
藤田 はい。参画してすぐの頃でした。「高齢者を温かくもてなすCO2固定ベンチ設置事業※2」が掛川市の街づくり協働推進事業として採択されました。そのプロジェクトのネーミングです。
 
松浦 プロジェクトではその年に、時ノ寿の森クラブでベンチを20基制作し、保健、医療、福祉の中核施設の「希望の丘」に設置しましたね。
 
藤田 副理事長の清水さんと、時ノ寿の森クラブらしい木づかいのベンチとは何かをあれこれと検討し、地域の知識、信頼、文化という目に見えない資本を良い関係で集結させる仕組みによって「ベンチ」というカタチの価値をつくりだす。そしてそれが、地域の経済をしっかりと循環させ、地域の課題解決に導くプロジェクトにしたいと考えました。
 
松浦 藤田さんが参画してくださったことで、制作形態も新しくてユニークなものが生まれました。高齢の方や障がい者の方が座りやすいベンチにデザインし、誰でも簡単に組み立てられるように大工・建具の職人がキットに加工したんですよね。
 
藤田 はい。組み立て作業にはクラブのメンバーはもちろん、障がい者施設のみなさんにも協力していただいたので、障がい者の方が組み立てやすいよう、設計段階から工夫を凝らし、釘を一切使わない方法にしました。
 
松浦 僕は、このプロジェクトを社会実験と位置づけたいと思いました。企業など民間資金を活用した行政の協働事業であるけれど、人間であれば働き盛りの樹齢40年から50年のスギ材を活用し、多くの人の手を経て完成させる。クラブの様々な職種のメンバーや障がい者の方達が協力し、知恵をしぼり、技を発揮して成果品をつくりだす。これはまさに地域の中の個々の技能や力量の結晶なんですよ。循環するシステムによって、やり甲斐が生まれ、アイデアや工夫につながったのではないでしょうか。
 
藤田 僕としても、このプロジェクトは協働作業でベンチをつくって終わりにするのではなく、関わる全員が有形無形の利益を受ける循環システムを目指したらどうかと考えていました。今後も時ノ寿の森クラブの活動の中にシステムとして位置づけて、継続できたらと。
 
松浦 このとき新たな視点が時ノ寿の森クラブに加わったことを実感しましたね。この循環こそが、共生、共感、協働を生み出し、持続可能の秘訣になると考えています。
 
藤田 このシステムを時ノ寿ブランドとして、他の地域にも広げていきたいですね。
 
松浦 確かにそうしたいですね。自然の恵みや様々な人の支え、関わりがあって人は生きられる。そこを謙虚に受け止めて感謝をして、自分の役割を果たしていかなければなりません。その感謝の心や共感がなければ、協働はきれいごとでしかありませんからね。

     

 



ブルックスタジオ制作実例

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NPO法人 時ノ寿の森クラブ

静岡県掛川市倉真字時ノ寿地内の森林の持つ豊かな多様性と多面的な機能の大切さを訴求するとともに、その保全に必要な事業を行い、未来の子どもたちにふるさとの森を本来の姿で引き継ぐことを目的として環境共生型森林保全活動を続ける。
 
▶︎時ノ寿の森クラブホームページ

 


 
※1)森の集会所:木造伝統工法で建ててられた、約84平方メートル平屋建て。子供や大人、都会や山村の人たち、様々な人たちの知識や技術が交流する拠点。
※2)高齢者を暖かくもてなすCO2固定ベンチ設置事業:2015年4月に開業する希望の丘各施設利用者の利便向上施策として、時ノ寿の森の間伐材を社会に活用する山、町、人の資源循環活用システム。市民活動日本一を目指す掛川市市民活動推進モデル事業。
※3)森のようちえん:時ノ寿の森の自然環境を利用した幼児教育や子育て支援活動。自然の中で仲間と遊び、心と体のバランスの取れた発達と発育を目指す。
※4)時ノ寿学校:里地里山の環境資源を活用し、様々な活動を通して、子供から大人までが自然とともに生きるための「心」と「体」や生きる術を身につける私塾。

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