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第8話 いのちの森を未来へ。

NPO 時ノ寿の森クラブ 理事長 松浦 成夫氏(静岡県掛川市)
 

 No.3 森のいのちをつなげる石けん

藤田 最近の大きなプロジェクトとしては「森の石けん」がありましたね。
 
松浦 環境改善素材の開発・販売を事業にしている会員からの相談が始まりでした。捨ててしまうヒノキの根の部分からオイルを抽出する技術があるので、これを何とか時ノ寿ブランドとして商品化できないかと言われたんです。
 
藤田 商品化のために、岐阜の工作メーカーに精油の抽出機の製造の相談に行ったり、化粧品製造会社に話を聞きに行ったり・・・。何を、どういう方法でつくれば、時ノ寿の森クラブらしい価値をカタチにできるのか? 最初はまったくの手探り状態でしたね。
 
松浦 そこから長い長い試作の日々が始まりました。そして化粧品製造会社の協力を得て、時ノ寿の森のヒノキの葉と葛の葉で「化粧用石けん」をつくることになりました。最初から原料を集めることは可能でしたから、製造方法を教えていただいてテストを繰り返し、試作品の完成までこぎつけたわけですよね。
 
藤田 まとめてしまうと何とも簡単ですが(笑)大変でしたよね。試作品が出来上がったタイミングで、商品のブランド化を通して時ノ寿の森クラブ自体のブランド化も図っていきたいとおっしゃって・・・。
 
松浦 商品のブランディングにとどまらず、時ノ寿の森クラブのブランドを一緒に考えようと、検討を重ねましたよね。
 
藤田 ブランディングには、そのブランド独自のストーリーが必要です。時ノ寿の森クラブならではの新しい意味や価値をつくり出し、地域社会に広めていきたいという想いから、ネーミングは「Grace of Forest 森の恵み石けん」としました。
 
松浦 この石けんは、本来であれば捨ててしまう森のいのちを使用した、一切の香料、着色料、合成界面活性剤無添加の、森にも人にも優しい化粧石けんです。売り上げの一部は時ノ寿の森クラブの森林保全活動費に還元されるので、いのちの森を次世代につなげる活動の一助にもなるというわけです。
 
藤田 はい。商品のコンセプトは、森林保全活動を続けてきたNPO法人が、捨てられてしまう森のいのちを使って、手づくりで自然熟成させた、「人につながる森のいのちの石けん」です。しかし、商品をアピールする方法が限られていて、パッケージだけでどうすれば「欲しい」と思って「買っていただける」のかを検討するのにとても時間がかかりました。
 
松浦 「どんなメッセージを発信するか」「どんなイメージを受け手に抱いてもらうか」という点にしっかりと時間をかけていただきました。それを踏まえて提案されたパッケージは、真っ黒な箱に有機的なシルバーのロゴが配置された上品で洗練されたデザインでしたが、僕は不思議と腑に落ちたんです。
 
藤田 「グレイス」には、姿、態度の品の良さ、しとやかさ、美しさ、洗練の意味があります。人にも環境にも優しい石けんの特徴から、ロゴマークは、スクリプト書体をベースとして、里山にある豊かな生態系と人との有機的な関係を緩やかな曲線で結んで、一番伝えたかった「必然性のある偶然」を表現しました。
 
松浦 本質的価値を引き出して、それを伝えるための型というのか・・・、仕組みがあって、カタチができている。そしてそれが発信力にもなる。このとき、「なるほど藤田さんが言うデザインというのはこういうことか」とはっきり気づかされました。
 
藤田 人や社会や商品がどうあるべきかを思い描いて、それを実現するのがデザインだと思います。だから社会に必要なんじゃないでしょうか?
 
松浦 頼もしいですね。藤田さん、デザインの思考を利用してもっと多くの人に「共感」を伝え、地域の活性化にご協力をお願いします。山の再生に終わりはありません、自立と持続化には賛同者が必要です。人の心を動かすのがデザインの考え方、役割だとも僕は思います。
 
藤田 「地域のために良いこと」を真ん中にして知恵を出す人がいて、ボランティアで時間を提供する人がいて、サービスやモノを提供する企業がある。目に見えるもの、目に見えないもの、いろんな人がいろんなカタチの資本を出し合ってプロジェクトが実現しているんですね。僕は森にデザインをかけ合せて、共感形成型の経済実現のお手伝いを続けていきます。
 
松浦 「森のようちえん※3」も始まって、大変好評をいただいています。里山の中で生きる術を学ぶ「時ノ寿學校※4」も開校しました。他にもたくさんのプロジェクトが進行しています。
 
藤田 2019年には森林と市民を結ぶ全国の集いが掛川市倉真で開催されますし、またあの熱意溢れる松浦さんを見ることができそうですね。
 
松浦 まだまだ僕も若いからね(笑)。4年前みたいに、熱く語り合いますか?
 
藤田 お手柔らかにお願いします(笑)。
 
2017年12月21日 NPO時ノ寿の森クラブ「森の集会所」にて

     

 



ブルックスタジオ制作実例

>時ノ寿の森クラブ
>Grace of Forest
 

NPO法人 時ノ寿の森クラブ

静岡県掛川市倉真字時ノ寿地内の森林の持つ豊かな多様性と多面的な機能の大切さを訴求するとともに、その保全に必要な事業を行い、未来の子どもたちにふるさとの森を本来の姿で引き継ぐことを目的として環境共生型森林保全活動を続ける。
 
▶︎時ノ寿の森クラブホームページ

 


 
※1)森の集会所:木造伝統工法で建ててられた、約84平方メートル平屋建て。子供や大人、都会や山村の人たち、様々な人たちの知識や技術が交流する拠点。
※2)高齢者を暖かくもてなすCO2固定ベンチ設置事業:2015年4月に開業する希望の丘各施設利用者の利便向上施策として、時ノ寿の森の間伐材を社会に活用する山、町、人の資源循環活用システム。市民活動日本一を目指す掛川市市民活動推進モデル事業。
※3)森のようちえん:時ノ寿の森の自然環境を利用した幼児教育や子育て支援活動。自然の中で仲間と遊び、心と体のバランスの取れた発達と発育を目指す。
※4)時ノ寿学校:里地里山の環境資源を活用し、様々な活動を通して、子供から大人までが自然とともに生きるための「心」と「体」や生きる術を身につける私塾。

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